鍋茶屋と行形亭①
花街として栄えた新潟には多くの料亭があるが、「鍋茶屋(なべぢゃや)」と「行形亭(いきなりや)」はその双璧といっても過言ではない。政財界の重鎮や、著名な文人墨客が利用する料亭ということで、我々が滅多に入れる場所ではなく格式の高いお店なのだが、何度か仕事でお邪魔している。
開局時、当時の副社長からの指示を受けて、その鍋茶屋に開局記念スポットのセールスに行ったのが初めての訪問だった。「もう話はつけてあるから、企画書を持って説明だけしてくれば大丈夫だから行ってきてくれ」という指示だった。
本町の仮事務所から5分足らずで行ける場所にあり、古町通と東堀通の間にある「鍋茶屋通り」と呼ばれる小路を歩いてゆくと、白壁の立派な門構えが見えてくる。生い茂る樹木の奥には木造3階建の、いかにも歴史を感じさせる建物がある。この建物は国の登録有形文化財に指定されている。門をくぐると左手に大きな玄関がある。本来、そこは新人営業マンが入る入口ではないのだが、何も知らずに入っていった。用件を告げると、当時のご主人だったか担当者の方に事務所に案内され、企画の説明をして了解をもらうことができた。テレビCMを放送するようなお店ではないのだが、この時だけはすんなりと広告を出してくれた。この時以外、鍋茶屋のテレビCMを見た記憶はない。
その訪問からだいぶ後になるのだが、担当している鮮魚会社がスポンサーをしている番組取材で鍋茶屋を訪れた。この時は各部屋を案内してもらった。どの部屋も風情があって良いのだが、何といっても3階の大広間が素晴らしい。窓からは庭にある木々の豊かな緑が眺められ、とても開放的だ。さらに、明治天皇が御巡幸時に休まれたという洋間も案内してもらった。日本料亭でありながら、洋間が用意されていることに驚いた。やはり老舗の料亭の歴史は凄いものだと改めて感心させられた。
行形亭に続く。