坂上

田中角栄②

現在、日本では地方創生という言葉があちらこちらで散見されるが、これは1972年に発行された「日本列島改造論」で既に発表されているものと内容は同じものだ。目新しいものではない。地方の活性化こそが日本の将来を明るいものにする。

今年は関東大震災から100年の節目。今、日本では首都直下地震、南海トラフ地震、東南海地震など、太平洋側での巨大災害の発生が危ぶまれている。この30年で7割から8割の確率で発生するといわれているこの大地震が発生すると、条件が悪ければ30万人以上が犠牲になると予測されている。

この発表は脅しでも何でもない。真実である。大地震は必ず発生する。それは日本列島の歴史、科学が証明しているものだ。有史以来、日本列島の太平洋側は、幾たびも大地震や大津波に見舞われている。いつ発生するか?という日時が予測できないだけだ。

太平洋側の大都市がことごとく被災すると、日本は国難に陥る。国家存亡の危機となる。それを防ぐためにも日本海側を始め、地方都市にリスクを分散する必要がある。角さんの列島改造論は大災害からの防災でもあるのだ。

東京から見た田中角栄と、新潟から見た田中角栄は全く違う。東京では大悪人だったかもしれないが、新潟では神様のような、優しくて偉大な政治家だ。東京で生まれた自分は、日本海側で暮らしてみて、初めて田中角栄の偉大さを知った。視点が正反対に変わったのだ。嘘ではない。国境の長いトンネルを超えると、真っ白な雪の世界に劇的に変わる。環境がこれほど変化するところは世界中を探してもそう多くははない。都市と地方の格差を象徴するような、そんな劇的な変化を何とか変えようとしていたのが田中角栄という人物なのだ。

雪国新潟で長年暮らしてみて、都市と地方の格差の是正を成し遂げようとしていた角さんの気持ちが痛いほどわかる。東京にいたら絶対に分からない。今や東京以外は全て地方だというのに。

東京一極集中が止まらず、衰退するばかりの地方。今の日本の姿を見たら、角さんは何というだろうか。